【書評】「肉体改造のピラミッド 栄養編」から学んだ3つの大切なマインドセット

 

 

もし僕が筋トレ学部の授業を担当したら、

間違いなくこの本を教科書に採用します。

 

 

一言でいうなら、そんな本です。

 

今日は筋トレ界隈で話題になった「肉体改造のピラミッド 栄養編」の内容を少し紹介しつつ、そこから学んだ大切な考え方を紹介していきます。

話題になったとはいえ、5720円する本ですのでなかなか手にとるのはハードルが高いかもしれません。

しかし、価格以上の価値はありますので気になる方はぜひ手にとって読んでみてください。

 

 

「肉体改造のピラミッド 栄養編」とは

 

原著名「THE MUSCLE & STRENGTH PYRAMID NUTRITION」で2019年に出版されました。

著者はEric Helms、Andy Morgan、Andrea Valdezの3名による共著です。

 

筆頭著者であるEric Helmsは

  • 運動科学、栄養学の分野の研究者
  • ボディビルやパワーリフティングの競技者としての経歴
  • 現在はフィットネス情報サイトの運営や、競技者向けに指導も行う

マルチに活動している人物です。

 

一言でいうと、

「フィットネスについて理論と実践を兼ね備えた人物」であると言えます。

 

 

Eric Helmsのインスタグラムはこちら。

https://www.instagram.com/helms3dmj/

 

 

そんなEricがこれまでの知識や経験を凝縮して、1冊の本にしたのが本書「肉体改造のピラミッド 栄養編」です。

 

そして2021年6月、筋トレ情報サイトAthlete Body.jp ( https://athletebody.jp/ )によって、その日本語verが出版されました。

まだまだ英語圏と日本ではフィットネスについて情報格差がありますので、英語圏の濃い情報が日本語で読めるのは嬉しいですね。

 

本書は「栄養」にフォーカスした内容ですが、その姉妹本として「トレーニング」編もあります。

まだ邦訳されてませんが、英語が読める人は手にとって読んでみることをオススメします。

フィットネスの専門用語は難しいですが、それ以外の語彙レベルはそこまで高くありません。

 

 

「肉体改造のピラミッド 栄養編」では、身体作りに大切な栄養の知識の全体像をつかむことができます。

ピラミッド形式で一番大切な土台から1段ずつ積み上げて栄養に関する知識が解説されています。

また知識を学ぶだけでなく、それをどう実践につなげるかという視点をとても大切にしている本です。

 

次の章で本書の内容をざっくり紹介していきます。

 

 

ピラミッドの紹介

(Athlete Body.jp より引用: https://athletebody.jp/2021/06/21/msp-nutrition/ )

 

これがピラミッドの全容です。

重要な順に5段階で、Level: 1からLevel: 5まであります。

知識がある方がみると「なるほどな」となるのではないでしょうか。

 

大切なことは土台をおろそかにしないことだとEricは繰り返し言及しています。

それでは一番大切なLevel: 1から見ていきましょう。

 

 

Level 1: 「カロリー収支と体重変化」

 

ピラミッドの土台は「カロリー収支と体重変化」です。

本書では体重とカロリー摂取量を記録することが推奨されています。

 

『基本的に体重はカロリー収支で決まります。カロリー収支がプラスに振れた状態が続くと体重は増え、マイナスに振れた状態が続くと体重は減ります』 肉体改造のピラミッド 栄養編 P.35より
という原則に基づいて、具体的なカロリー摂取量をどうすればよいか、どのタイミングで増量すべきか減量すべきかなどが解説されています。

 

Level 2: 「三大栄養素・食物繊維」

 

ピラミッドの2段目は「三大栄養素・食物繊維」です。

三大栄養素とは、たんぱく質、炭水化物、脂質を指しています。

PFCですね。

 

そのPFCの役割と各栄養素の摂取配分について解説されています。

摂取配分の考え方については増量期、減量期とそれぞれきっちり分けて解説されています。

 

個人的には「減量中に筋肉を維持するためにできる最も大切なことはトレーニングである」というところにすごく共感しました。

そして、そのトレーニングの質を落とさないようにいかに栄養を摂取していくかというどこまでも実践者の視点で解説がされています。

ただ体重を落としたいという願望だけに答える世間のダイエット本とは一線を画す内容だということを再認識しました。

 

Level 3: 「微量栄養素・水分摂取量」

 

ピラミッドの3段目は「微量栄養素・水分摂取量」です。

微量栄養素とは主にビタミンやミネラルのことです。

微量栄養素は身体の状態、精神の状態、空腹感、トレーニングのパフォーマンス、筋肉のつきやすさに影響してきます。

 

本書では微量栄養素をしっかり確保していくための食生活が解説されています。

 

Level 4: 「食事回数・タイミング」

 

ピラミッドの4段目は「食事回数・タイミング」です。

いつ、どれだけカロリーを摂るのが良いかという話です。

 

減量期の停滞を防ぐための「コツ」についても科学的な視点から解説してくれています。

食事回数については絶対的に「○回」というよりも、自分の生活リズムに合うものを選ぶように推奨しています。

 

Level 5: 「サプリメント」

 

ピラミッドの最上段は「サプリメント」です。

これは栄養管理において最も重要度が低いことを意味しています。

著者のEricはサプリメントをたくさん摂ることを肯定していません。

 

『サプリメントを「必要」と考える状況は多くありません。特定の栄養素が不足している場合や、特別な症状があって特定の栄養素を確保しないといけないような場合に限られると考えましょう』  P.124より

 

昨今のサプリメント市場について辛辣な意見を投げかけたりもしています。

そのへんもかなり面白いところとなっています。

 

 

そんなEricが「このあたりは摂ってもいいんじゃない」というトーンで推しているサプリとしては

 

  • マルチビタミン
  • EPA & DHA (フィッシュオイル)
  • ビタミンD
  • クレアチン
  • カフェイン

 

が挙げられています。

栄養に詳しい方からすると「なるほどな〜」と思いますよね。

 

あれ「BCAAやグルタミンは?」と思った方はぜひ本書を読んでみてください。

そのあたりのサプリメントについても具体的に言及されています。

 

Ericはサプリ屋さんではないので、意見にバイアスがかかっていません。

サプリ屋さんは自分のサプリメントを販売したいがためのポジショントークが混ざりますが、Ericにはそれがありません。

サプリメントに詳しい人のサプリメントへの忖度なしの意見はとても貴重です。

 

正直いって、この章めちゃくちゃ面白いです。

 

 

 

大切なマインドセット

 

ここからは本書から学んだ大切な考え方を紹介していきます。

Ericは本書で具体的な方針を明らかにしたりもしますが、答えがないことに関しては考え方を提示するなどして柔軟に対応しています。

 

正直、フィットネスに詳しい人だと本書の内容は「知ってた or すでに実践済」ということが多いかもしれません。

 

しかし、行間に滲み出るEricの考え方は啓蒙的でとても触発されるものが多いので、すでに知識は事足りていますという人にも本書はオススメです。

最後にこの章で少しそのような考え方の一部を紹介していきます。

 

 

【マインドセット1 】「良い or 悪い」、「0か100」という思考をやめる

 

本書で「良い or 悪い」、「0か100」という考え方を「白黒思考」と呼んでいます。

 

フィットネスの世界ではポジショントークも多く、しばしば

 

「ジャンクフードは身体に悪い』

「レッグプレスよりスクワットのほうが良い」

「プロテインよりEAAを飲むべきだ」

「筋トレするならお酒はやめるべきだ」

 

などのような「0か100」の意見が頻発します。

しかし、実際の世の中に「0か100」で言い切れることはそう多くはありません。

 

多くの場合、「ある特定の状況でのみ」そうと言えることがほとんどです。

 

情報に触れたときはいつもHowとWhenを考えましょう。

「いつ」、「どのような」状況ならそれが当てはまるか。

 

そして、多くの答えは中間地点にあります。

たとえば、筋トレにお酒はあまりよくないかもしれません。

しかし、お酒を飲まないではなく、いつも飲んでいるビールをハイボールにして糖質を制限するという選択肢もあります。

0か100では言い切れないところの選択肢が自分に一番合っているかもしれません。

自分に合っている選択肢を選んでいくことが無理なく続けていくためのコツです。

 

情報リテラシーをあげるには白黒思考をやめることは必須です。

 

 

 

【マインドセット2】食事は個々の食品ではなく「食生活」という単位で考える

 

「良い食品」や「悪い食品」があるわけではありません。

「良くない食品」を食べ続けてしまう「悪い食生活」があるだけです。

 

単発の食事で身体に悪い影響がでることはほとんどありません。

習慣になってしまうのが問題なんです。

 

食事は「食生活」という大きな単位で考えましょう。

単発の食事よりもそれを積み重ねた「食生活」をどうしていくかが大切です。

 

健全な食生活にしていくためには、食生活に「型」をもつことが大切です。

自分が好きな食べ物のなかで栄養面でも優れている食べ物をピックアップして、それらでローテーションを回すようなイメージです。

 

僕の場合はたんぱく質を摂りたいとき鶏むね肉も食べますが、ほたても結構食べます。

コストコで100g150円くらいなので安くはないですが、続けられなくもないくらいの値段です。

 

たんぱく質は

  1. 鶏むね肉
  2. ほたて
  3. 牛もも肉

で基本的なローテーションを組んでます。

 

プロ野球のチームと同じで先発ローテーションは5〜7枚は欲しいものです。

そんな感じでその他の栄養素についても「型」を作っていきます。

 

たまに「型」から外れて気分転換にジャンクフードなどを食べてもいいかもしれません。

しかし、普段はしっかり「型」のなかにおさまるようにする。

 

そうしてメリハリをつけることで無理なくフィットネスを続けていくことができます。

 

 

 

 

【マインドセット3】サプリメントの大半は「お金がかかるだけで何のメリットもない」

 

辛辣な言葉ですが、本書の中にある言葉です。

 

『実際のところ、サプリメント全般に関してひとことで言うと、「お金がかかるばかりで何のメリットもない」という製品が大多数です』  P.124より

 

決して僕の意見ではありません(笑

 

サプリメントはピラミッドの最上段、つまり優先順位としては一番低いところに位置づけられています。

 

サプリメントは基本的な食生活が整った上で、その補助として扱うくらいのイメージがちょうどいいと思います。

 

サプリメントには科学的なエビデンスがあると言われるものもあります。

しかし、それっぽい論文がでていようとその論文内の実験結果がそれほど信ぴょう性があるものでないことも多いです。

世の中には「質の低いエビデンス」というものも存在するのです。

 

本書で述べられていることでもあるのですが、サプリメントメーカーがお金をだして研究者にお願いして自社のサプリメントの売上に貢献できそうな結果がでたときだけ発表するというような背景もあります。

 

ちなみにある特定の団体に迎合して都合のよい説を唱える学者のことを御用学者といいます。

フィットネス界にも御用学者がたくさんいるかもしれません。

なので論文を読みこなすにもかなりのリテラシーが必要です。

 

そして、サプリメントは見た目はただの粉なので派手に宣伝しないことには売ることはできません。

 

『フィットネス業界のサプリメントには派手な広告が付き物で、有名なアスリートを雇って宣伝されることも少なくありません』 P.139より
あまり大きな声では言いたくありませんが、有名な人が大人の事情で「このサプリはいい」ということも多いわけです。
それらの真実をすべて見抜くのはほぼ不可能です。
そんなことを目指すよりもサプリメントに頼らなくて済むような食生活を目指すほうが懸命だと言えます。
そして最後にEricは新興のサプリメントに対して、このように言っています。
『新商品の大部分は科学的な裏付けなどまったくないものです。こういう商品はシンプルに無視してしまいましょう』 P.142より

 

 

 

 

最後に

 

この記事では「肉体改造のピラミッド 栄養編」のざっくりとした紹介と、そこから学んだ

 

  • 「良い or 悪い」、「0か100」という思考をやめる
  • 食事は個々の食品ではなく「食生活」という単位で考える
  • サプリメントの大半は「お金がかかるだけで何のメリットもない」

 

という3つのマインドセットを紹介しました。

お役に立てたならば幸いです。

 

最後にですが、もしこの本を読んで良かったと思った方は「スターティング・ストレングス」もオススメです。

「肉体改造のピラミッド」と同じくAthleteBody.jpの八百健吾さんが監訳をされています。

 

BIG3の怪我をしない正しいフォームが詳しく解説されていて、BIG3を中心にトレーニングされている方にとって必ず目を通しておきたい情報が多いです。

価格以上の価値があるので、ぜひ読んでみてください。